組織間の対立解消事例 STEP2.事情整理


組織間の対立解消事例 STEP2

経営層とコンサルタントによる事情整理

営業部門と仕入部門の対立を解消するにあたり、
まずは双方の部門の事情を把握し事情や会社への貢献を認めることが必要です。
そのため、経営層とコンサルタントが両部門からヒアリングを行い事情や考えを聴き取りました。


双方の事情や考えをしっかりと聴いて把握する

営業部門からは

  • お客様からの要望に応えたかった
  • 会社の売り上げに貢献したかった
  • 「顧客満足度を上げたかった」
  • 「必要な要望なのに突っぱねられることが不満」

といった声があがり、必要なことなので対応してほしいという思いがあることが分かりました。

仕入部門からは

  • 「お客様や会社のためになるなら協力したいが、自部門や取引先の負担が大きすぎる
  • 「大きな負荷がかかるが営業部門の評価になるだけで仕入部門の評価にならず不公平
  • 「やって当然だという態度で要求される」

といった声があがり、必要なことであれば対応したいがかかる負担と釣り合っていないという思いがあることが分かりました。

対立の背景にはどちらの部門にも正当な思いや事情があります。
こういった声を元に次にそれぞれの部門の事情を認めること、会社への貢献を認めることで
当事者の納得感を生む土台をつくっていきます。


部門の事情を認める

それぞれの部門から挙がった声に対しまずは経営層とコンサルタントでそれぞれの部門の事情を認めること、
つまりその背景にある思いや業務状況を肯定することが対立解消のポイントです。

営業部門に対しては

  • お客様のため、会社のために取り組んでいるとよく分かった」
  • 「お客様にしっかりした対応をしようとしている結果だと思う」
  • 「お客様の要望が強い中、会社のために日々要望に対応しようと取り組んでくれていることはありがたい

というようにお客様や会社のためという思いや、必要に駆られてやっているという事情を理解し肯定しました。

仕入部門に対しては

  • 「要求への対応が大きな負担となってしまっていることは理解できたし申し訳ない
  • 「そういった状況の中、会社に迷惑がかからないよう通常業務と要求対応どちらも行ってくれていることはありがたい

というように負担がかかっているという事情とそれでもなんとか対応しようしていることを認め肯定しました。

対立が起こっているということは業務的な問題に加えて人間関係的な問題が起こっているということであり
単に会社の利益や業務効率などの業務的な内容だけでは解決には至りません。
当事者の納得感を得るため、利益や貢献よりも前段階にある思いや事情を認めることが解決には必要です。


会社への貢献を認める

次に、それぞれの部門の会社への貢献を認めること、
つまり各部門の対応が実務的にどういった利益につながっているかを整理し肯定します。

営業部門に対しては

  • 「まずは無理にお客様の要望全てに応えなくても普段の業務がお客様や会社の利益になっていることに自信をもてばよい
  • 「その上でより要望に応えようとしていることがトータルで十分お客様の役に立っている

というようにまずは無理な要望をしなくても基本的な業務で利益を生んでいること、
加えて要望に応えようとすることももちろん利益につながっていることを認め、関係者で共有しました。

仕入部門に対しては

  • 「ただ突っぱねているだけではなくそれが会社のため、自部門の業務のため、取引先との関係のために役に立っている
  • 「要望を引き受けてくれることで、売上やお客様の満足向上つながっている

というように要望を拒否することも引き受けてくれることもどちらも会社の利益につながっていることを認め、関係者で共有しました。
まずはどちらの対応もメリットがあるということを認識し共有することが重要で、
どのような場合にデメリットが大きくなるのかというような整理は次のステップで行います。

対立を解消しようとする際には
どうしても「無理な要求」や「要求に応えられない」といった負の要素だけに注目してしまいがちですが
各部門の対応が客観的にどういった利益につながっているのかを把握し認めることが重要です。


ルール化の前にこのような事情を把握するステップが必要

対立解消のためにルール化を行おうとしても、
事情を把握した上ででないと客観的な状況把握ができない、当事者が納得しない状態での活動となってしまうため対立解消につながりません。

対立の当事者たちは自分たちの事情や貢献を理解しない人からの話には耳を傾けません。そのため、
・事情や貢献を経営層とコンサルタントが客観的に深く理解すること
・そのうえで各部門の事情や貢献を認め納得してもらうこと

が必要となります。
対立解消がうまくいかない場合の多くはこのステップを行っていないことが原因です。
事実を把握し納得してもらうことで対立解消の土台が整います。

次回はこれらをもとにルール化し対立解消につなげた結果を紹介します。

>>組織間の対立解消事例 STEP3.ルール化